日中共同声明は台湾を決めていない
台湾の位置づけを条約と国会会議録の原文からやさしく読みほどく
- 著者
- 城戸 直哉
- シリーズ
- ニュースのことば 第3巻
- 分野
- 政治・時事の用語
- 形態
- 電子書籍(Kindle)/紙書籍
- 出版社
- 文灯社
「日本は、もう認めた。」——そう言われたとき、それはどこに書いてあるのか。この本は、その一行から始まります。
わたしは、認めたとも、認めていないとも書きません。書くのは、どの文書の、どの項に、何と刷ってあるか。それだけです。
開いた紙の名前を先に挙げておきます。共同声明の原文。平和友好条約の原文。カイロ宣言と、ポツダム宣言と、降伏文書。国会の会議録。閣議で決められた答弁書。ニュースの記事は、この本の出どころに入れていません。記事が引いているもとの紙のほうへ、そのつど戻りました。本文の事実には注を付け、章の終わりに引用元をそのまま並べてあります。誰でも同じところを開いて、同じ文字を読めます。
読まなかった側についても、先に書いておきます。この本が読むのは、日本の政府の文書だけです。相手の国の紙にも、相手の国で述べられたことにも、当たっていません。片側だけを読んだ本になります。黙って片側だけを読むのと、読む範囲を先に言ってから読むのとは、別のことです。
十二章で、こういうことが分かります。
・共同声明の第二項と第三項では、主語も動詞も違うこと ・「承認する」と「十分理解し、尊重し」は、どちらも文書に刷ってある言葉だということ ・「一つの中国」という五文字が、二枚の本文のどこに入っていて、どこに入っていないか ・一九七八年の平和友好条約には、台湾の語が一度も出てこないこと ・政府が答えなかった文書があり、答えなかったことも事実であること ・文書には種類があり、条約と声明と答弁書と会議録では作り方が違うこと ・一九七二年から二〇二六年まで、別々の人が同じ形で述べていること ・そのあいだで、二枚の答弁書の文言だけが三か所そろっていないこと
最後に、十一章ぶんを四つの問いに畳みます。どの文書の話か。その項の動詞は何か。日本の文書が書いていないのはどこか。それは、どの種類の言葉か。
四つ当てても、認めたかどうかの答えは出てきません。出てくるのは、その一行の根拠が見えるかどうかのほうです。次に「日本はもう認めている」と言われたら、それはどの文書の、どの項ですか、と聞き返せます。