『存立危機事態は戦争ではない』(城戸 直哉・著)表紙
政治・時事の用語

存立危機事態は戦争ではない

安全保障関連法と国会答弁の原文から、ニュースのことばをやさしく読みほどく

著者
城戸 直哉
シリーズ
ニュースのことば 第1巻
分野
政治・時事の用語
形態
電子書籍(Kindle)/紙書籍
出版社
文灯社

「存立危機事態」。ニュースで何度も聞いて、そのたびに「戦争になるということか」と思って、そこで止まっている人へ書きました。

この本は、賛成とも反対とも書きません。いまの決まりが良いとも悪いとも書きません。政治家や政党の良し悪しにも触れません。そのかわり、次にこの言葉を聞いたときに何を確かめればいいのかを、最後に四つの問いへ畳んでお渡しします。

寄りかかったのは四つだけです。条文の原文。国会の会議録。内閣官房などが公表している「平和安全法制」の概要。参議院の事務局が出している調査資料。報道された記事は、根拠に使っていません。本文に出てくる事実には注を付け、章の終わりに引用元をそのまま並べてあります。誰でも同じところを開いて、同じ文字を読めます。

読んでいくと、こういうことが分かります。

・武力攻撃事態・武力攻撃予測事態・存立危機事態・重要影響事態は、どこがどう違うのか ・いま効いている条文の一句が、一九七二年の政府文書の語から来ていること ・三つの要件は、二つ目と三つ目のほうが実は重いこと ・「明白な危険」と決めるのは誰で、そのとき何を書き残す義務があるのか ・国会の承認は、どの入口から来ても同じ一段に乗ること ・この事態では「適用しない」と名前まで挙げて決めてある措置があること ・後方支援に武器の提供は含まれない、と資料が書いていること ・ある法律の定義から「我が国周辺の地域における」という一句が消えたこと

題は言い切りの形をしていますが、その言い切りを支えているのは第7章の一枚だけです。誰かがそう言った、という話ではありません。

反対に、答えを出せなかったところもあります。認定のときにどの要素がどれだけ重いのか。地理を指す一句が消えたあと、範囲はどこまでになるのか。どちらも、資料に書いた一行が見当たりませんでした。埋めなかったところには、埋めなかったと書いてあります。

分からない場所に名前が付いていれば、次に誰かがそこを埋めて話しているとき、それが資料の話なのか、その人の読み方なのかを分けられます。この本が渡せるものの半分は、そちら側にあります。

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