趣味は下手でいい
休みの日、何もしていない大人へ。趣味の選び方と、続けられる形のつくり方
- 著者
- 峰岸 徹
- シリーズ
- 大人の趣味 シリーズ 第1巻
- 分野
- 大人の趣味のはじめ方
- 形態
- 電子書籍(Kindle)/紙書籍
- 出版社
- 文灯社
「趣味は何ですか」と聞かれて、一瞬詰まる。「これといって、ないんですよね」と笑ってごまかす。相手はすぐ次の話に移りますが、気にしているのは、あなただけです。日曜の夜に今日をふり返っても、洗濯と買い物と、画面を見ていた時間しか出てこない——この本は、その引っかかりから始まります。
先に言っておきます。この本には、楽器の弾き方も、絵の描き方も、パンの焼き方も、一行も書いてありません。何を買えばいいかも、どの教室がいいかも言いません。趣味をお金に変える話も出てきません。書いてあるのは、その手前です。何を選び、どこから手をつけ、始めたあとどうやって続く形にするか。読み終えて手に残るのは、何かのやり方ではなく、あなた自身の入口の決め方です。
渡したいものは、三つの許可に集約されます。上手にならなくていい。人に見せなくていい。お金にしなくていい。趣味は、誰にも採点されない時間だからです。
まず、三つの思い違いを外します。役に立たなければ意味がない、という物差し。好きなことは探せば見つかるはずだ、という思い込み。ちゃんと選ばなければ、という構え。好きかどうかは始める前には分かりません。判定は「もう一回やりたいか」で、それは試したあとにしか出ません。そのうえで、選ぶ道具を四つ渡します。憧れている自分の姿ではなく、その一時間、体が何をしているかで選ぶ。十代のころの記憶を、復元ではなく材料として使う。一人で完結する形と、人と場所が要る形の、正反対の弱点を先に知る。そして、買うのは最後にする。押し入れに眠っているひと揃いは、意志が弱かった証拠ではなく、順番が逆だっただけです。
続けるほうも、正面から扱います。下手な時期は障害ではなく通り道であること。疲れた日のための軽い形を、元気なうちに決めておくこと。合わなければやめていいこと、そして「やめる」と「休む」は別ものだということ。見せるかどうかは自分で決めていいこと。最後に、必ずやって来る「上手だね、仕事にすれば」という誘いへの、線の引き方。
読み終えるころ、候補は三つに絞れていて、今週ひとつ試す段取りがついていて、やめても戻れると分かっています。がんばりましょう、とは書きません。がんばれる人は、もう始めているからです。